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椛島家住宅について

登録有形文化財「椛島(かばしま)家住宅」 平成29年5月2日登録

糸島地方における民家建築の流れを汲んだ近代的な和風建築の好例

 福岡県糸島市二丈田中に所在する椛島家住宅は、国の登録有形文化財です。国の登録有形文化財とは、建築してから50年以上が経過した建造物を使いながら残していくという制度です。

 椛島家住宅は、元々は二丈田中の大地主であった「満生(みついき)家」の住宅でした。また、糸島地方最大の前方後円墳「国史跡・一貴山銚子塚古墳」とは敷地を接しており、満生家の方々はこの古墳を先祖の墓という意識をもち、庭の一部として管理してきました。

 登録された建造物は、明治30年頃に建てられた主屋や、蔵、門、塀などです。南門に入ると正面に主屋と庭門及び塀、左手に古墳、右手に庫院(旧納屋)があり、納屋の東壁に連続して東門・北門及び塀があります。区画された中で主屋、庭門及び塀、庫院を見ることができ、南門及び塀とともに上質な景観を創り出しています。主屋は2階建で間口が広く、玄関がなく農家のニワと共通する前庭など、江戸時代の民家の特徴を残しています。主屋の随所には、当時の建具職人、左官職人、絵師の技術の高さが伺える細工が施されるなど、当時の地主層の民家における前近代と近代の上質な特徴を併せもち、糸島地方における民家建築の流れを汲んだ近代的な和風建築の好例として、高く評価されています。

 なお、現在も住居として用いられている建造物群であるため、常時の公開はされていませんので、ご注意ください。

名称文化財種類種別文化財解説文
椛島家住宅蔵登録有形文化財(建造物)建築物主屋北西の仏間から渡り廊下を介して南北棟で建つ、土蔵造二階建、切妻造桟瓦葺である。花崗岩積の基礎上に建ち、外壁は腰を人造石洗出し仕上とし、隅部ではドイツ壁技法によりルスティカ風の隅石を表し、漆喰の鉢巻を廻らす。もと納戸蔵と伝える良質な土蔵。
椛島家住宅庫院登録有形文化財(建造物)建築物敷地南西隅に南北棟で建つ。木造平屋建、入母屋造桟瓦葺で、西、北面に下屋を廻らし、西面は吹放ちとする。外壁漆喰塗で腰を竪板張とし、西面南寄りに出入口を開く。広い庇が特徴的な外観など、旧家の納屋としての構造や意匠をよく保ち、敷地景観に寄与する。
椛島家住宅主屋登録有形文化財(建造物)建築物敷地中央に南面する二階建。正面に出格子や大小の八角形の格子窓を配して独特な外観をもち、東寄りを土間とする。床上部は食違いの五室の西側に角屋を二列張出し、前列を奥座敷、後列を仏間などとし、造作も質が高い。当地方の近代大型住宅の特徴をよく示す。
椛島家住宅庭門及び塀登録有形文化財(建造物)その他工作物主屋正面から奥座敷前の主庭を囲むように廻り、主庭と表庭を画す門及び塀。門は腕木門、切妻造桟瓦葺で、欄間周囲を塗込めて主屋と意匠統一がなされる。塀は外側を竪板張として欄間を透かす。簡明かつ繊細な意匠をもち、庭内に落着いた風情を醸す。
椛島家住宅東門・北門及び塀登録有形文化財(建造物)その他工作物庫院北東隅から北にのびて敷地東辺を画す塀と、途中に開く東門、北端の北門。両門とも腕木門、切妻造桟瓦葺で板戸内開とする。塀は内外とも漆喰塗で、南寄りの前庭部は潜りと格子を設け、北寄りでは外側に簓子下見板を張る。庫院と調和が図られた意匠をもつ。
椛島家住宅祠登録有形文化財(建造物)建築物社の北東方で煉瓦積の基壇上に南北棟で建つ。桁行、梁間とも〇・六五メートル、切妻造鉄板葺、妻入である。井桁に組む土台に柱を立て、開口となる南面を格子戸両開きとし、他は竪板張とする。内部は縦長の玉石を祀る。社ととにも屋敷の鬼門を守る小祠である。
椛島家住宅南門及び塀登録有形文化財(建造物)その他工作物主屋大戸口正面に構える南門と東西にのびる塀。南門は間口二・九メートルの薬医門、切妻造桟瓦葺。本柱を五平とし、冠木上に梁を三筋架け、軒桁、棟木とも舟肘木で受け、棟通り中央に蟇股を飾る。塀は腰板張で欄間を透かす。格式ある表構えを創る門塀である。
椛島家住宅社登録有形文化財(建造物)建築物主屋北東方に南北棟で建つ。切妻造桟瓦葺、妻入で、内部を前後に二分し、奥を内陣、前寄りを外陣とする。外陣は正面を格子引違、側面を窓として開放的に作り、内陣は竪板壁。両妻面は、柱上の三斗で妻虹梁を受けて蟇股を載せる。敷地景観を形成する社である。